合気道は、それまでの大東流などの体術を源流とする武術を体系化し、独自の精神性を加味し、植芝盛平翁によって創始された武道です。
合気道には、「対する相手と相和す」という精神性が、さまざまに構築されている技にも反映されており、技の熟達者においては、本来の技の型以上の効果を引き出すことが可能です。
技の基本は、物理法則と人間の身体の構造を利用したものであり、その本来のメカニズムを理解し攻撃方法として活用ができる技量が備わった熟達者には、相手との握手だけでも、技につなげることが可能です。
そのため、合気道上級者がいたずら技として、握手の際に相手を無力化して跪かせるなどが可能です。
合気道の技のかかる仕組み
合気道の技がかかる仕組みには、人間の体のつくりによる関節の可動域や重心の位置、相手との力の均衡を変化させるなどの力学を利用したものです。
攻撃してくる相手との接触箇所とそこにかかる力を利用することで、相手の体勢を崩し、その反作用として現れる力を投げや固技のための制圧状態を生み出します。
これらの技をかけるために必要な大前提には、相手の力の加わり方に応じた脱力での対応が必要です。
相手との握手で強く握られると、無意識に強く握り返すということが、普通の反応ですが、これでは合気道の技にはつながりません。
相手の力に合わせて無意識に力が入るところを逆に力を抜くことが、合気道の技の極意となります。
握手からの合気道の技を仕掛ける方法
合気道の技を仕掛けるには、相手の腕を掴む、肩を持たれるなどの相手との接触箇所が必要です。
つまり、相手と握手している状態からでも、技をかけることは可能です。
相手と握手している状態から、相手の力の方向や力の変化の瞬間を捉えることで、養神館合気道でいう4か条の締め技や3か条の固め技を利用して、その後の相手の体勢の変化に合わせた四方投げや入り身といった技への変化が可能です。
合気道の技には、相手の力が入らない瞬間をとらえることが最も重要なメカニズムで、握手のような相手の力の変化が少ない状態でその変化を利用できるためには、上級者でも難しいものです。
例えば、相手が突きを出そうと腕を曲げている状態や、突きを出して腕が伸びきった状態、あるいは、突いた腕の横側が力の入らない瞬間であり、そこを捉えることが、技をかけるための唯一のタイミングとなります。
握手からの技にも、このタイミングと相手の力の捉え方が重要な要素です。
合気道の技は、相手と接触することでかけることが可能
合気道の技は、気功などの気のエネルギーでかけるものではなく、相手との接触による力の関係と身体構造を利用することで可能にします。
相手の力が入らない瞬間をとらえ、その力の方向と相手の体勢を利用して効果的な技を施すことで制圧や投げを打つことが可能です。
つまり、相手と握手でもつながっていなければ技を繰り出すことはできず、その力の変化が大きい状態からの技がかけやすいといえます。
相手の力を接触箇所からひとまとめにすること、熟達者がいたずら合気道技として演武で見せる握手での相手の制圧も、これらの極端なケースです。